おおきなかぶ「水彩℃」 [00475]

おおきなかぶ「水彩℃」 [00475]

販売価格: 400円(税別)

(税込価格: 432円)

これは文芸グループおおきなかぶの、最新にして最高傑作だと思う。
おおきなかぶは、デザイナーであり漫画や小説など多彩なフィールドでの創作活動も行う甘茶茂と、膨大な量の文芸や哲学をたしなみ、自身の文芸作品に昇華しつつ、ライブハウスなどでDJ活動も行うDJ Yudetaroの2人が中心となり結成されたグループ。
シカクでは過去に3冊の文芸誌を販売しており、純文学のテイストでDJやシステムエンジニアなどといった現代的(そしてどこか退廃的)な人々を描く小説や、日常をどこかシニカルに詠みあげる短歌などを発表してきた。
今回「水彩℃」に掲載された作品たちは、これまでの作品たちのテイストを踏襲しながらも、間違いなく一段階上のステージへ上がっている。
本誌の半分を占める「透明な出発と夢の到着」は、哲学とSF的要素が絶妙に絡み合った大作。めまぐるしく行き来する舞台や場面をきちんと描き、読者を置いてけぼりにさせない筆力もさすが。
唯一の短歌作品である「ハート銀行」は、日常のワンシーンを切り取った現代短歌。ちょっと斜に構えた青年のようなシニカルさを持ちつつ、リズミカルな韻踏みで思わず声に出してしまうような奥ゆかしさがある。
そこから一転、ですます調で書かれた小説「開花/n」は、文体に慣れるまで初めは抵抗があったのだけど、読み進めるうちに、なるほど、これはですます調でないといけない小説だ、と気付く。純粋で大人になりきっていない少年少女が、ある不思議な現象をきっかけに背徳的な欲求に目覚めていく様は、異常なまでにエロティック。それを地の文の丁寧な言葉遣いがさらに引き立たせているのだ。藤子・F・不二夫の「異色短編集」は、子ども向けの絵柄だからこそ恐ろしさが余計に引き立っているが、それに近い必然性を感じた。
「オーベルジュ・ダ・ドゥ・ロン・ロン」は、タイトルからもわかる通り、都会的でおしゃれ。台風が迫る都会と男女の心の機微を対比させつつ、押し付けがましさはなく爽やかに仕上げている。小奇麗な文章で読者をケムに撒くようなオシャレ小説とは違う、「きちんとおしゃれな」小説だ。
とにかくインディーズにしておくのが勿体ないくらい、素晴らしい世界を見せてくれる本だった。もしあなたがエンタメ小説より純文学を好んでいたり、哲学的なタッチの物語が好きであれば、是非これを読んでほしい。
A5/63P
【目次】
(小説)透明な出発と夢の到着 DJ Yudetaro
(短歌)ハート銀行 甘茶茂
(小説)開花/n DJ Yudetaro
(小説)オーベルジュ・ダ・ドゥ・ロン・ロン  甘茶茂
おおきなかぶ「水彩℃」 [00475]

販売価格: 400円(税別)

(税込価格: 432円)